新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症と授乳について
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル: News From LLLI
メディアリリース
問い合わせ: [email protected] (英語のみ)
(2020年2月19日)ノースカロライナ州ローリー
新型コロナウイルス感染症についての国際保健医療的な状況は、現時点で入手できる限られた情報に基づいており、刻々と変化しています。ウイルスへの理解が進むごとに、情報や推奨を最新のものに維持しようとしている国際的な保健医療団体や協会の努力に、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)は敬意を表します。LLLIは、現在起きている国際保健の危機の行く末を追い続けていきます。
60年以上母乳育児支援を続けてきたLLLIは、母乳が子に免疫を与え、それによって病気から守るという大切な役割を持つことついて、すべての家族の理解を促しています。親やほかの家族が感染症にかかっても、母乳を飲んでいる赤ちゃんが健康でいられることはよくあることです。赤ちゃんは母乳中の抗体を含む複数のさまざまな免疫効果のあるたんぱく質の恩恵を受けるからであり、特に直接授乳することによってその効果が大きくなることは、多くの研究で明らかになっています。
出産直前に病気に感染し授乳を開始した人や、授乳中に感染した人は、特異性分泌型免疫グロブリンA (IgA) やほかにも多くの重要な免疫物質を母乳中に産出することで授乳中の赤ちゃんを守ることができ、赤ちゃんが本来持っている免疫機能を高めることができます。そうなると、こうした免疫学的因子によって、赤ちゃんの体はより効果的に曝露や感染に反応することができるといえるでしょう。また、手洗いなどの衛生対策に気を付けることでもウイルスの伝播を減らす助けになるでしょう。
授乳中の人が病気にかかった場合、授乳を中断しないことが重要です。赤ちゃんはそのときにはすでに母親や家族と同じウイルスにさらされているので、免疫物質の入っている母乳をやめずに授乳を続けることが最も赤ちゃんのためになります。
授乳を中断することで起こるかもしれない問題には以下のようなものがあります。
この最後のポイントは極めて重要です。家族が感染源にさらされている場合、赤ちゃんも同じ感染源にさらされるからです。したがって、母乳育児を中断することは、赤ちゃんが病気になること、あるいは病気が重くなることのリスクを実際には高めてしまうかもしれません。
新型コロナウイルス感染症にかかったかもしれないと思われる人は、十分な手洗いと、ウイルスを拡散させないように防御マスクをするといった適切な衛生対策をすることが奨励されます。
親が入院を必要とするほどの健康状態の場合、親との分離や授乳の中断によって上記に挙げたような結果につながる可能性を心に留め、可能な限り赤ちゃんが母乳を飲み続けられるよう配慮されるべきでしょう。医学的に授乳の中断が必要だとみなされるほどの状況であれば、母乳を手もしくは搾乳器でしぼることが奨励されます。母乳には複数の免疫物質が含まれており、しぼった母乳を飲ませることで、赤ちゃんへの感染を予防し、また赤ちゃんが感染したとしても程度を軽くし感染期間を短くすることができるかもしれません。
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症についての指針やそのほかの情報を、WHOのウェブサイトに複数の言語で紹介しています。国際連合児童基金(UNICEF)も情報を提供しています。リンクは以下の参考文献を参照ください。
上記の情報のすべては、インフルエンザなどのほかの呼吸器ウイルス感染のリスクが高い、あるいはかかった家族にも当てはまります。
【訳注】状況や情報は刻々と変わっており、また一人ひとりの病状や状況が違うので、かかりつけの医師によく相談してください。
参考文献
Centers for Disease Control and Prevention (CDC; 28 January 2020). About 2019 Novel Coronavirus (2019 – nCoV). Accessed 29 January 2020 and 12 February 2020 from:
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/index.html
Centers for Disease Control and Prevention (CDC; 17 February 2020). Frequently Asked Questions and Answers: Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) and Pregnancy. Accessed 18 February 2020 from: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/specific-groups/pregnancy-faq.html
Centers for Disease Control and Prevention (CDC; 15 February 2020). Coronavirus Disease 2019 (COVID-19): Frequently Asked Questions and Answers. Accessed 19 February 2020 from:
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/faq.html
Chen H, Guo J, Wang C, et al. Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records. Lancet 2020; published online Feb 12 2020 at: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30360-3
China National Health Commission. Transcript of Press Conference on Feb 7, 2020 in Chinese. Available at:
http://www.nhc.gov.cn/xcs/s3574/202002/5bc099fc9144445297e8776838e57ddc.shtml
Lam, C.M., Wong, S.F., Leung, T.N., Chow, K.M., Yu, W.C., Wong, T.Y., Lai, S.T. and Ho, L.C. (2004), A case‐controlled study comparing clinical course and outcomes of pregnant and non‐pregnant women with severe acute respiratory syndrome. BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology, 111: 771-774.
Scientific American (12 February 2020). Disease Caused by the Novel Coronavirus Officially Has a Name: COVID-19. Accessed 12 February 2020 from:
https://www.scientificamerican.com/article/disease-caused-by-the-novel-coronavirus-officially-has-a-name-covid-19/
Shek CC, Ng PC, Fung GP, et al. Infants born to mothers with severe acute respiratory syndrome. Pediatrics 2003; 112: e254.
UNICEF (February 2020). Coronavirus disease (COVID-19): What parents should know. Accessed 18 February 2020 from :
https://www.unicef.org/es/historias/coronavirus-lo-que-los-padres-deben-saber
Wong SF, Chow KM, Leung TN, et al. Pregnancy and perinatal outcomes of women with severe acute respiratory syndrome. Am J Obstet Gynecol 2004; 191: 292–97.
World Health Organization (WHO; 20 January 2020). Home care for patients with suspected novel coronavirus (nCoV) infection presenting with mild symptoms and management of contacts: Interim guidance 20 January 2020. Accessed 29 January 2020 from:
https://www.who.int/publications-detail/home-care-for-patients-with-suspected-novel-coronavirus-(ncov)-infection-presenting-with-mild-symptoms-and-management-of-contacts
World Health Organization (WHO, 2020). Novel coronavirus (2019-nCoV). Accessed 12 February 2020 from: https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019
Zhu H, Wang L, Fang C, et al. Clinical analysis of 10 neonates born to mothers with 2019-nCoV pneumonia. Transl Pediatr 2020; published online Feb 10 2020. DOI:10.21037/tp.2020.02.06.
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル: News From LLLI
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問い合わせ: [email protected] (英語のみ)
(2020年2月19日)ノースカロライナ州ローリー
新型コロナウイルス感染症についての国際保健医療的な状況は、現時点で入手できる限られた情報に基づいており、刻々と変化しています。ウイルスへの理解が進むごとに、情報や推奨を最新のものに維持しようとしている国際的な保健医療団体や協会の努力に、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)は敬意を表します。LLLIは、現在起きている国際保健の危機の行く末を追い続けていきます。
60年以上母乳育児支援を続けてきたLLLIは、母乳が子に免疫を与え、それによって病気から守るという大切な役割を持つことついて、すべての家族の理解を促しています。親やほかの家族が感染症にかかっても、母乳を飲んでいる赤ちゃんが健康でいられることはよくあることです。赤ちゃんは母乳中の抗体を含む複数のさまざまな免疫効果のあるたんぱく質の恩恵を受けるからであり、特に直接授乳することによってその効果が大きくなることは、多くの研究で明らかになっています。
出産直前に病気に感染し授乳を開始した人や、授乳中に感染した人は、特異性分泌型免疫グロブリンA (IgA) やほかにも多くの重要な免疫物質を母乳中に産出することで授乳中の赤ちゃんを守ることができ、赤ちゃんが本来持っている免疫機能を高めることができます。そうなると、こうした免疫学的因子によって、赤ちゃんの体はより効果的に曝露や感染に反応することができるといえるでしょう。また、手洗いなどの衛生対策に気を付けることでもウイルスの伝播を減らす助けになるでしょう。
授乳中の人が病気にかかった場合、授乳を中断しないことが重要です。赤ちゃんはそのときにはすでに母親や家族と同じウイルスにさらされているので、免疫物質の入っている母乳をやめずに授乳を続けることが最も赤ちゃんのためになります。
授乳を中断することで起こるかもしれない問題には以下のようなものがあります。
- 母乳を突然飲めなくなるのは乳幼児にとって精神的に辛いことかもしれない
- 母乳をしぼる必要があるが、それだけでは産生量が減るかもしれない
- 哺乳びんを使うことで、のちに赤ちゃんが直接授乳を拒否するかもしれない
- 直接授乳をしないことで、感染予防効果のある免疫物質の供給量が減る可能性があり、母乳をしぼってあげるよりも直接授乳をしたほうが、赤ちゃんのその時のニーズに合わせて産生された母乳が飲め、免疫物質がより有効に活用されることがわかっている
- 直接母乳を飲むことで得られる免疫面でのサポートがないことで、赤ちゃんが病気にかかるリスクが高まるかもしれない
この最後のポイントは極めて重要です。家族が感染源にさらされている場合、赤ちゃんも同じ感染源にさらされるからです。したがって、母乳育児を中断することは、赤ちゃんが病気になること、あるいは病気が重くなることのリスクを実際には高めてしまうかもしれません。
新型コロナウイルス感染症にかかったかもしれないと思われる人は、十分な手洗いと、ウイルスを拡散させないように防御マスクをするといった適切な衛生対策をすることが奨励されます。
親が入院を必要とするほどの健康状態の場合、親との分離や授乳の中断によって上記に挙げたような結果につながる可能性を心に留め、可能な限り赤ちゃんが母乳を飲み続けられるよう配慮されるべきでしょう。医学的に授乳の中断が必要だとみなされるほどの状況であれば、母乳を手もしくは搾乳器でしぼることが奨励されます。母乳には複数の免疫物質が含まれており、しぼった母乳を飲ませることで、赤ちゃんへの感染を予防し、また赤ちゃんが感染したとしても程度を軽くし感染期間を短くすることができるかもしれません。
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症についての指針やそのほかの情報を、WHOのウェブサイトに複数の言語で紹介しています。国際連合児童基金(UNICEF)も情報を提供しています。リンクは以下の参考文献を参照ください。
上記の情報のすべては、インフルエンザなどのほかの呼吸器ウイルス感染のリスクが高い、あるいはかかった家族にも当てはまります。
【訳注】状況や情報は刻々と変わっており、また一人ひとりの病状や状況が違うので、かかりつけの医師によく相談してください。
参考文献
Centers for Disease Control and Prevention (CDC; 28 January 2020). About 2019 Novel Coronavirus (2019 – nCoV). Accessed 29 January 2020 and 12 February 2020 from:
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/index.html
Centers for Disease Control and Prevention (CDC; 17 February 2020). Frequently Asked Questions and Answers: Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) and Pregnancy. Accessed 18 February 2020 from: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/specific-groups/pregnancy-faq.html
Centers for Disease Control and Prevention (CDC; 15 February 2020). Coronavirus Disease 2019 (COVID-19): Frequently Asked Questions and Answers. Accessed 19 February 2020 from:
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/faq.html
Chen H, Guo J, Wang C, et al. Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records. Lancet 2020; published online Feb 12 2020 at: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30360-3
China National Health Commission. Transcript of Press Conference on Feb 7, 2020 in Chinese. Available at:
http://www.nhc.gov.cn/xcs/s3574/202002/5bc099fc9144445297e8776838e57ddc.shtml
Lam, C.M., Wong, S.F., Leung, T.N., Chow, K.M., Yu, W.C., Wong, T.Y., Lai, S.T. and Ho, L.C. (2004), A case‐controlled study comparing clinical course and outcomes of pregnant and non‐pregnant women with severe acute respiratory syndrome. BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology, 111: 771-774.
Scientific American (12 February 2020). Disease Caused by the Novel Coronavirus Officially Has a Name: COVID-19. Accessed 12 February 2020 from:
https://www.scientificamerican.com/article/disease-caused-by-the-novel-coronavirus-officially-has-a-name-covid-19/
Shek CC, Ng PC, Fung GP, et al. Infants born to mothers with severe acute respiratory syndrome. Pediatrics 2003; 112: e254.
UNICEF (February 2020). Coronavirus disease (COVID-19): What parents should know. Accessed 18 February 2020 from :
https://www.unicef.org/es/historias/coronavirus-lo-que-los-padres-deben-saber
Wong SF, Chow KM, Leung TN, et al. Pregnancy and perinatal outcomes of women with severe acute respiratory syndrome. Am J Obstet Gynecol 2004; 191: 292–97.
World Health Organization (WHO; 20 January 2020). Home care for patients with suspected novel coronavirus (nCoV) infection presenting with mild symptoms and management of contacts: Interim guidance 20 January 2020. Accessed 29 January 2020 from:
https://www.who.int/publications-detail/home-care-for-patients-with-suspected-novel-coronavirus-(ncov)-infection-presenting-with-mild-symptoms-and-management-of-contacts
World Health Organization (WHO, 2020). Novel coronavirus (2019-nCoV). Accessed 12 February 2020 from: https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019
Zhu H, Wang L, Fang C, et al. Clinical analysis of 10 neonates born to mothers with 2019-nCoV pneumonia. Transl Pediatr 2020; published online Feb 10 2020. DOI:10.21037/tp.2020.02.06.